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09/02 紅い痕
日の当たらない青白い腕

指でなぞる血管

爪をたて、力を入れていく

ガリガリと削るようにした痕は紅く残った

ひりひりとした痛みの中で

だんだんとひいていく痕を眺めていた

もっと硬く

もっと鋭いものでしてみたいと思った

今は紅く残るだけの痕も

消える事のない紅の痕になるだろうか

悲鳴もあげられなくなった心の痛みを代わりに受けてくれるだろうか
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08/11 痛み
青白い月の光の中
独り空を見つめ涙を流す

あの時の自分が甦る

毎日がただ過ぎていき
自分だけが取り残された感覚

締め付けられるような苦しさから逃れたくて
自分で締め付けた心

立ち止まったら崩れ落ちそうで
現実から目をそむけ走り続けた

やっと向き合った現実
それは私を拒絶した

あの時の記憶

泣くことしか出来なかった

痛みをごまかしたくて
自分で自分を痛めつけた

心を凍てつかせ
体に傷をつけ
全てを閉じたら痛みから解放されるのだろうか
ひやりとした鋭い金属

熱く脈打つ位置に押し当て

力を込める


心が痛いのを

一瞬忘れられる行為だと

あの人は言っていた


無数の傷跡を残し

痛みを増やすだけだとわかっていても

一瞬でも苦しみを忘れられるから、と

同じ行為を繰り返す
04/09
チクリとまた新しい針が刺さる


重ねた年月の分

投げつけられた言葉の分

流した涙の分だけ増え続ける


少しずつ自分の力で抜いていく


取り除く度

紅が流れ

鈍い痛みが残った


刺さった時より鋭い痛みが走るトコロは

自分の力では抜けない


誰かの力を借りたい

腐食の激しい針は自分の体ごと腐っていく

自分でも見るに堪えないその姿に

手を差し伸べてくれる「誰か」など居はしない

あなたが現れるその時までは


錆びついた針を片手に

話しかけてくれた

まっすぐ見てくれた

優しく抱きしめてくれた

あなたの持っていた針が

心臓を貫いたのも気づかぬ程

最初で最後の温もりに酔っていた


気づいた時には既に腐食が始まっていて

今まで感じた事もない痛みに

声にならない悲鳴をあげた


一瞬でも見てくれたあなたの瞳は

もうこちらを見ていない

一瞬でも触れてくれたあなたは

手の届かない所に行ってしまった


ひとり

朽ちるのを待つ

月が奇麗な夜
血も流れず

熱も持たない

貴方がいなければ

手足を動かす事も出来ない


永い時を貴方と共に居た

何度も壊れ

その度直してくれた

ずっと一緒だと思っていた

新しい人が来るまでは


貴方と新しい人の楽しいダンスを

燃え盛る暖炉の中から見ていた


何も感じない体で良かった

全てを感じる事が出来たら

壊れる度悲鳴を上げ

この炎の中から貴方を見ることなど叶わなかっただろう


狂う程の痛みを伴うとしても

それでも

一度だけでも

貴方の温もりを感じてみたいと

叶わぬ願いを胸に抱く


最期に見たのは

ずっと傍にあった


もう届く事のない

貴方の優しい笑顔