04/09 針

チクリとまた新しい針が刺さる


重ねた年月の分

投げつけられた言葉の分

流した涙の分だけ増え続ける


少しずつ自分の力で抜いていく


取り除く度

紅が流れ

鈍い痛みが残った


刺さった時より鋭い痛みが走るトコロは

自分の力では抜けない


誰かの力を借りたい

腐食の激しい針は自分の体ごと腐っていく

自分でも見るに堪えないその姿に

手を差し伸べてくれる「誰か」など居はしない

あなたが現れるその時までは


錆びついた針を片手に

話しかけてくれた

まっすぐ見てくれた

優しく抱きしめてくれた

あなたの持っていた針が

心臓を貫いたのも気づかぬ程

最初で最後の温もりに酔っていた


気づいた時には既に腐食が始まっていて

今まで感じた事もない痛みに

声にならない悲鳴をあげた


一瞬でも見てくれたあなたの瞳は

もうこちらを見ていない

一瞬でも触れてくれたあなたは

手の届かない所に行ってしまった


ひとり

朽ちるのを待つ

月が奇麗な夜